岡山大学出版会

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ESD実践共同体の形成促進に向けた教育実践

ESD実践共同体の形成促進に向けた教育実践

著:柴川弘子
ブックデザイン:尾中俊介(Calamari Inc.)
A5判上製本 214ページ
定価: 4,950円(本体4,500円+税10%)
ISBN: 978-4-904228-82-1

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概要

Education for Sustainable Development「持続可能な開発のための教育」(ESD)は、現代社会の持続可能性と教育の重要性に対する認識から生まれ、近代教育の再構築と変革を要求するひとつの教育運動です。ESDの教育学上の意義と課題を明らかにし、教育実践の構造と特性について探究することを目的とした本書では、ESDとしての実践が発展する経緯と背景のみならず、関わる人々がどのような学びを深め、どのような価値観がもたらされているかをも考察しています。

目次

はじめに

第Ⅰ部 ESD「持続可能な開発のための教育」の要件と課題

 序論ー教育学が探求すべき課題:「持続可能な開発」

 第1章 「持続可能な開発」概念の本質
  第1節 「持続可能な開発」概念の生成と発達の過程
   1-1:「持続可能な開発」概念の登場とその背景
   1-2:「持続可能な開発」概念の発達
  第2節 ESDの登場と国際的展開
   2-1:「持続可能な開発」からESDへ
   2-2:認知度の拡大と概念の変化
   2-3:国際的施策化するESD

 第2章 ESDにおける「education(教育)」とは
  第1節 「持続可能な開発」と「教育」の関係
   1-1:教育に対する期待とESDの理念
   1-2:教育への接合に対する批判
  第2節 ESDの教育学的意義
   2-1:ESDが提起するもの
   2-2:ESDの概念的課題ー矛盾する性質
   2-3:近代教育への問い

 第3章 ESD実践の要件
  第1節 ESDの構成要件
   1-1:不断のプロセスとしての「持続可能な開発」
   1-2:「持続可能な開発」が問うもの
  第2節 あらゆる人々の参画・エンパワメントの理想と現実
   2-1:多様な主体の協働とその困難
   2-2:批判的問いと教育の質的変容
  第3節 ESD実践共同体の形成促進
   3-1:ESD推進の原動力ー「実践共同体」
   3-2:「実践共同体」理論からの示唆
   3-3:組織化の可能性と課題

第Ⅱ部 ESDに資するサービス・ラーニングの特性

 序論ーサービス・ラーニング(Service Learning)への着目

 第4章 サービス・ラーニングとは
  第1節 歴史・背景・定義
   1-1:誕生と定義をめぐる議論
   1-2:鍵概念・理論的源流ーESD実践としての理論的可能性
  第2節 SL学習理論における課題
   2-1:SLの目指す社会変容とESDとの矛盾
   2-2:SLにおける主体形成と社会変革の誤謬
  第3節 ESDとしてのSL学習理論と分析視点の検討
   3-1:SLの変容的学習論の再検討
   3-2:SLにおけるシティズンシップとコミュニティ概念の再考
   3-3:SLの「政治性」をめぐる葛藤と「互酬性」概念の再考
  第4節 ESDを生み出す実践としてのSLの可能性
   4-1:ESDの実践上の困難
   4-2:ESD実践としての新たな視座
   4-3:ESDとSLー異なるベクトルがもたらす可能性

 第5章 ESD-SL実践の可能性
  第1節 フィールドの概要
   1-1:H高校のSL実践
   1-2:M市の概況
   1-3:M市における課題
   1-4:M市の振興計画
   1-5:M市の地域課題をめぐる施策の現状
  第2節 M市H高校におけるESD-SLの企画と展開のプロセス
   2-1:SLの方向転換ー高校の存続危機と「総合的な学習の時間」の改革
   2-2:協働の開始とESDとしての位置付け
   2-3:SL協力者らの関心との共鳴
  第3節 ESDに資する実践(ESD-SL)の模索
   3-1:ESD-SLの実践フィールドの開拓
   3-1-1:国際交流団体Aー青年国際ボランティアのワークキャンプを通じた交流促進
   3-1-2:商店街B会ー多様な主体を結びつける場
   3-1-3:棚田Cチームー「持続可能な開発」実践の先進モデル
   3-1-4:山村Dグループー中山間地域における社会的起業
   3-2:SL協力者と生徒の問題関心の交差
   3-3:高校・SL協力者・生徒・地域住民との協働企画「ふれあい祭り」
  第4節 ESD-SLを基軸とした教育課程の開発
   4-1:外部団体企画・運営によるESD-SL特化科目の開設
   4-2:広範囲のESD学習ネットワークへの参加

 第6章 ESD-SLの特徴
  第1節 「持続可能な社会」を展望したSL
   1-1:SLの全体計画に組み込まれたESDの視点と手法
   1-2:多様な関心と持続可能性の課題との関連づけ
   1-3:SL協力者のコーディネート
  第2節 多様な主体の協働による企画と運営
   2-1:領域の多様性を担保するコース設定
   2-2:フィールドの位置付け
   2-3:実践を共有する場
  第3節 実践共同体への正統的周辺参加のプロセス
   3-1:関心テーマによるグループ構成
   3-2:メンバーの更新と多元性
   3-3:実践共同体の組織化におけるジレンマ

 第7章 ESD-SLの過程で変容する実践共同体と実践の発展に向けた課題
  第1節 SL協力者のCoPの変化
   1-1:持続可能性という視点の獲得とその変容
   1-2:実践を捉える視点の深化とSLとの矛盾・困難
   1-3:異領域との協働に対する関心
  第2節 SL協力者・教員による新たな実践共同体の形成
   2-1:SL-CoP/SD-CoPへの変化
   2-2:ESD-SL実践共同体の形成促進要因
  第3節 実践の発展に向けた課題
   3-1:地域というフィールドの再考
   3-2:パターナリズム回避のジレンマ
   3-3:ESD実践共同体の組織化という視点

第Ⅲ部 ESD実践共同体の変容・再形成と新しいSLの創成

 序論ーESDに資する実践への発展に向けて

 第8章 新しいSLの創成
  第1節 Y町Y高校におけるESD-SLの展開
   1-1:Y町およびY高校の概要
   1-2:インフォーマル性の高いESD-SL(S島ESDプログラム)からの開始
   1-3:フォーマル教育へ浸透させる試み
   1-4:学校外部に派生した実践「未来子ども連合]
  第2節 ESD-CoPの萌芽プロセス
   2-1:SLへの関わりの中での学びと変容
   2-2:実践の進化と新たな学び
   2-3:SL協力者からESDの実践者へ
  第3節 ESD実践共同体の特質
   3-1:多様な実践共同体の相互作用を促進する視座
   3-2:正統的周辺参加の過程での学びと新たな人間像
   3-3:不確実性の克服に抗うための努力

 第9章 版図の広いESD実践を創成するSLの構造
  第1節 多種多様な小さな実践の集合体としてのSL
   1-1:小さな実践の持つ力
   1-2:ESD実践への多元的な入り口
   1-3:多様な領域/実践ー実践者を媒介する場
  第2節 予定調和に抗うための視座
   2-1:協力者・学習者から「共同実践者」へ
   2-2:根源的な問いをもたらす場
   2-3:子ども・生徒による実践の攪拌
  第3節 フォーマル教育に揺らぎをもたらす構造
   3-1:カリキュラムの外部における実践者の交流の促進
   3-2:実践を媒介・接続するSLの新たな構造
   3-3:インフォーマル教育とフォーマル教育の相互刺激

 第10章 三相の連動した教育実践を展開する上での課題
  第1節 教育的活動の陥穽
   1-1:学校的空間の拡張の問題
   1-2:ESDの変革性を維持するための仕掛け
  第2節 不確実性の受容と変化に対する寛容
   2-1:メリットの見えにくさ
   2-2:ESDに対する批判的視点の涵養の困難
   2-3:SL企画者・協力者から生涯学習者への変容
  第3節 未完のプロジェクトー「持続可能な社会」を展望する実践
   3-1:ローカルコミュニティに焦点化した実践の限界
   3-2:Think Globallyの困難
   3-3:「失敗」という成果

終わりに
  本研究の成果と今後の課題

参考文献一覧
謝辞